調査不十分で間違っているところもあるかもしれませんが、アメリカのアジリティの概要を書いてみました。 ルールの詳細などについては各組織のWEBサイトで確認してください。
1.アメリカのアジリテイ組織
(1)AKC
American Kennel Club http://www.akc.org/
1934年設立のアメリカ最大の犬組織団体。日本のJKC(1949年設立)と関係が深く、いずれも国際組織であるFCI(Federation
Cynologique International)の傘下組織。
JKCと同様AKCでは犬登録を始め、ドッグショーやアジリテイ競技を含む各種犬に関する事をやっている。
AKCのメンバークラブ並びに関連団体組織は5000にものぼる。そのうち各種イベントを行っている団体クラブは約500。
AKCのアジリテイで目指すは「MACH」(Master
Agility Champion)タイトル。
AKCの国内最高大会はAKC National Championship大会。FCI World Agility Championship世界大会への出場者は選ばれたチームによるAKC
Agility Invitational大会で勝ったチームが出場。
(2)USDAA
United States Dog Agility
Association, Inc. http://www.usdaa.com/
USDAAは1986年設立。メンバークラブは約100。USDAAは国際大会も目指しており年一回世界大会である「USDAA
Grand Prix of Dog Agility WorldChampionship」をアメリカで開催している。
USDAAはロシア人が始めた新しい国際アジリティ組織団体であるIFCS(International
Federation of Cynological Sports)に属している。
日本で同じくIFCSと関係を持っているOPDES(Organization of the Promotion of
Dog Education & Socialization)がUSDAA Grand Prix大会に選手を送っている。
USDAAで目指すタイトルは「ADCH」(Agility Dog
Champion)
(3)NADAC
The North American Dog Agility Council, Inc. http://www.nadac.com/
1993年に設立されたアジリティ専門組織で、会員クラブ組織は全米で約200。比較的ルールが厳しくなく初心者でも参加しやすい。
NADACはどこの国際組織にも属してなく、NADACの最高峰の試合は毎年秋に行われるNADAC
CHAMPIONSHIP。
目指すタイトルは「NATCH」(NADAC Agility
Champion)
(4)その他
・Australian Shepherd Club of America, Inc.(ASCA) http://www.asca.org/
・CANINE PERFORMANCE EVENTS, INC.(CPE) http://www.k9cpe.com/index.htm
・Just For Fun Agility(JFF) http://dogwoodagility.com/jff.htm
・The United Kennel Club(UKC) http://www.ukcdogs.com/
などもある。ASCAはNADACと一緒に共催されることも多い。
2.各組織概要
以下は3大組織であるAKC/USDAA/NADACについてのみ記載。
(1)参加資格
(2)種目
(3)レベルクラス分
いずれも最初は初級から参加しなくてはならない。初級クラスを規定回数合格すると中級クラスに進めて、中級をクリアすると上級クラスに進める仕組み。
更に細かなレベルクラス分がある。
(4)体高別クラス
バーの高さ=犬の体高ではない。詳細は省くが、例えばAKCの場合、ワンちゃんの体高が22インチ(約56cm)までであればバーの高さは20インチ(約50cm)。USDAAの場合、体高が22インチ(約56cm)だと26インチ(約66cm)の高さのバーを跳ばなくてはならない。
いずれも体高測定が義務付けられている。
AKCに於いては「Preferred」クラス、またUSDAAに於いては「Performance」クラスと呼ばれるバーダウンのクラスもある。
(5)部門別
それぞれ年齢により一般クラス、若年クラス、熟年クラスなどの部門に分かれている。
(6)ルール
ルールは複雑で各組織によってかなり異なっており、また初級、中級、上級にクラスが上がるほど一般的に採点は厳しくなっている。初級Regularクラスの主だった違い。
AKCの場合はバーを一つ落としたらそれで失格になるが、拒否しても、ミスコースしても、標準コースタイムから15秒遅れても合格になる。
USDAAは障害の高さやバーの高さが他の組織より一段高い。初級でもAフレームは滑り落ちそうな高さがある。しかもそのAフレームの上りでもきちんとコンタクトゾーンを踏まないと減点となる。.拒否は減点されないが合格するにはクリーンランしなくてはならない。
NADACはスピードが要求される。 だからテーブルはない。 各組織それぞれルールに特徴がある。
旋回スピード(ヤード)
やはりNADACのコース要求旋回スピードは速い。
3.大会参加方法
以下は一般的な大会参加方法であり、各組織、各運営クラブにより異なる。
(1)登録
AKC/USDAA/NADACともまず登録が必要。
USDAA/NADACへの登録は必要事項を記入して登録料$10-15 を払えば簡単に登録が出来るが、AKCの場合はアジリテイ犬としての登録ではなく「犬」としての基本登録がそのままアジリティ大会への参加資格となるのでDNA鑑定やマイクロチップ挿入などが要求される。ジェニファーの場合は日本のJKCの登録をAKCに変更する必要があったためAKCへの登録には数ヶ月掛かった。
(2)大会主催
AKC/USDAA/NADACとも自分で主催するのは全国Championship大会ぐらいで普通の地方大会は各組織の公認競技としてその組織に所属するアジリテイクラブが主催している。
その地方大会は英語で「Trial(トライアル)」と呼ばれ、日本で言う「競技会」。
(3)イベントの日程場所
登録が終わればいつ、どの大会に出るかを探す。探す手段としては:
1.各組織や各クラブのWEBサイトや、彼らが発行している刊行雑誌で探す。
2.「Dog World」等の犬一般雑誌のイベント欄で探す。
3.各アジリティクラブからの情報や口コミ。
4.最近DOG EVENTS ONLINE(http://www.dogeventsonline.com/)と言う便利なサイトが出来た。
一目で全国の毎月のイベントがわかるようになっていて、まだまだ少ないがオンサイトで
申し込める大会もある。
多くの大会が土日2日間による大会。中には木曜日からの4日間の大会も、日曜日1日だけの大会もある。
(4)Premium
なぜ「Premium〔プリミアム)」と言うのか分らないが、大会案内書をそう呼ぶ。
この大会案内書は6−8枚程度で構成されていて中味は:
1.
大会開催日時、場所
2. 種目やクラスの説明
3. 一般ルールの説明
4.
参加申込書/同意書
5. ボランティア申込書
6. その他、キャンピングカーサイトの利用料とか、近郊でワン
ちゃんと宿泊OKなホテルの案内など。
この大会案内書は各主催クラブのWEBサイトからダウンロードできるものが多い。
(5)申し込み
WEBサイトからオンラインで参加申込できる大会も少しつづ出てきているが、ほとんどが郵送による申込み。必要書類は:
1.
参加申込書と同意書
2.
参加費用
チェック(個人小切手)を同封する。
注意しなければならないのが申込受付開始日。これも大会案内書に書いてあるが、多くの場合郵便局の消印日と時間が基準となっており、大会案内書には例えば「申込受付開始日:○月○日 午前8時以降の消印有効」のように書いてある。
申込受付は到着順ではなく、消印の順番で受付されることが多い。規定された消印日時より前の消印となっていると受付されずそのまま戻ってくる。
(6)申込受付確認
大体申込受付期間は3−4週間。申込期限が終わるとEmailや郵送で確認書が送られてくる。既に定員オーバーになっていると「あなたはWaiting
List」です、という通知がくる。Waiting Listも一杯の場合は「残念ながら。。。」と言う通知と共に申込書とチェックが戻ってくる。
4.大会参加
大会参加に際し準備するもの:
数え上げたら切がないが、このくらいは最低持っていく必要があるだろうと思われるものは:
(1)イス (とにかく待ち時間が長いから)
(2)食料&飲み水 (売店がない場合は必須アイテム)
(3)簡易ケージ (車に入れている人もいるが暑さなど考えても簡易ケージがベター)
(4)アジ用リード (首輪をつけての出走は失格となるのでアジ用というより首輪がいらない短めのリード)
(5)記録ノート
(6)もちろんワンちゃん用品は一式
大会が室外の場合はできれば
(7)テント/タープ類 (木陰が少ない所が多いので日よけが必要)
室内の場合はテント類はまず不要だが、、下が泥だったり、木屑だったり、ゴムマットだったりするのでいずれにしても何かブルーシートみたいな敷物があると汚れない。
5.大会当日
[会場到着]
駐車場及びケージやイスの場所確保の為に早く到着が望ましい。とにかく行ってみないとわからないことが多いので、あとでバタバタするより早めに到着してセッテイングして、ワンちゃんとゆったり散歩するぐらいの余裕が欲しい。
[体高測定]
大会によって違うがだいたい朝7時ぐらいに会場がオープン。競技開始は早いところで8時ぐらい。それまでに必要であれば体高測定を受ける。
[大会日程]
その日の日程は事前にわかる場合と行ってみないとわからないときがある。すくなくとも現地に大会パンフレットみたいなものはまず見当たらない。
リングがいくつあるのか、どこにあるのか、自分が出走するクラスはどこのリングで何時ぐらいから始まるのか、掲示板等に書いてなければ周りの人に聞くのが一番。
その日のコースレイアウトは本部受付に用意されている事が多い。
[競技順番]
その日の競技段取りは主催者によってかなり異なる。初心者クラスから順番にやる場合と上級者クラスからやる場合がある。またそれぞれのクラスも体高が高い順番からだったり、低いバーの高さからだったりまちまち。
[ブリーフィング、コース下見、スタート準備]
各クラス毎に審判員によるブリーフィングが4−5分行われる。ブリーフィングでは必要なルールの説明やスタート/フィニッシュ方法の説明、そして「テーブル」が使用されているコースの場合はテーブルの姿勢等が伝えられる。
その後、コース下見。大会によっ異なるが大体10−15分ぐらい。
コース下見に前後してスタートライン地点で出走確認のチェックイン。スタートラインのところに準備されているボードにそのクラスの出走犬名、ハンドラー名、犬種、出走順番などがリストされているのでそこで出走を申し出る。
直前になって出走取り消しも出てくるので、出走間近になってきたら早目に行って競技委員の声が聞こえるスタートゲート近くで待ちたい。同じように待っている周りのワンちゃんには近づかない。
[競技開始]
最近は電気式時計が使われることも増えてきており、タイム計測員の人がストップウォッチを使うことがなくなってきたが、スタート前に計測員に犬の名前を告げ、そしてスタートOKの確認をもらう。
[競技終了]
終わると記録員がタイムと減点の数を記録用紙に書き込む。この記録用紙は、ハガキぐらいの大きさで、オリジナルとコピーの二枚つづりになっている。オリジナルは集計所に運ばれ、コピーはハンドラーがもらえる。これもその時によって違うが、ハンドラーがもらえる記録の写しは計測員のすぐ後ろの小さな箱に入れられていることが多い。この正式記録のコピーが欲しい人は、その箱の中から自分の記録用紙のコピーを探してもらう。
[結果発表]
結果が掲示板に発表されるのはどこも時間が掛かることが多い。これは待つしかない。
クラスが細かく分れていて、いちいちそれぞれのクラスの表彰式をやってる時間がないと言うことなのか表彰式は一切ない。
Qulified合格者には多くの場合紫色のリボンが、そして合格リボンとは別に上位入賞者(参加人数によって異なるが大体1位から4位ぐらいまでが対象者)にはそれぞれの順位の色リボンが贈られる。1位はブルーリボン。
掲示板で結果を見て、入賞していれば受付に行って、そこに無造作に置いてある入賞リボンを勝手にもって行って良い時もあるし、きちんと名前と記録を書き込まれているリボンが用意されているところもあり千種万別。
Trialと呼ばれている各地の地方大会でスポンサーが付いているのは見た事がない。だから1位になってもドッグフード一袋の賞品もなし。
地区大会とか、チャンピオン大会だとスポンサーが付くのだろうか、、まだ未知の世界でわからない。
6.アメリカのアジリテイ歴史
(参考文献: JULY 2004発刊 CLEAN RUN)
01/10/1978
世界で始めてのアジリティのデモンストレーションが英国のCrufts Dog Showで行わる。
1980
英国で初めてU.K. Kennel Clubの正式ルールに基づいた大会が行われる。
1986
USDAAが組織され、11/8/86に最初の大会がテキサスで行われる。
1993
NADACが設立される。最初のNADAC大会は7/3/93。
8/13/94
AKCが初めてアジリテイ大会を開催。
10/4/96
FCI最初の世界大会がスイスで開催される。
1997
Mr. Ken Boydのコーギー、Beckyが初めて同年にUSDAA/NADAC/AKCの全ての全国大会を制覇。
6/26/99
シェルティがAKCで最初のMACH(Master Agility Championship)タイトルを取得。
2000
IFCSが設立され最初の世界大会が3/31/02に行われる。
こうやって見るとアジリティの歴史って本当に浅い。 AKCがアジリテイを受け入れたのはUSDAAが最初にアジリテイ大会を開催してから8年も後。今みたいにアジテリィ大会が各地で盛んに行われるようになってまだ10年ぐらいでしょうか。でもアジリティは世界的にこれから益々盛んになっていくのではないかと期待しています。
(October 2004)